ロシア通貨の変遷 世界金融危機、ロシア 2008〜2009年 (影響と対応)
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概 況 2008年夏のアメリカ合衆国における信用収縮に端を発した世界同時不況に対して、ロシアの反応は当初鈍く、「これはアメリカ経済の破綻であり、わが国には豊富な外貨準備高もあり影響は少ない」 と平静を装っていた。 しかし、ロシアの好調な株式市場を支えていた欧米の金融資金が潮が引くように流出し、株価も石油価格もルーブルも下落してくると、ロシア経済はけっして楽観できる状況ではなくなってきた。 2004〜2008年にかけて原油価格が大幅に高騰し、ロシア経済は、この原油高の恩恵を受けて好況が続いていた。 ヨーロッパを中心とした外国人投資家による外資の流入により、2005年初頭には月平均800ポイント前後であった株取引上のRTS指数が2008年夏には2400ポイントにまで上昇するなど、ロシアの株式市場はこの3年間で3倍以上上昇した。 RTS指標の推移 (月平均) しかし、8月にロシアがグルジアへ軍事介入したことをきっかけに、外国人投資家のロシア市場からの流出が始まり、さらに9月中旬以降は、アメリカの名門証券会社で投資銀行でもあるリーマン・ブラザーズ証券 Lehman Brothers Holdings, Inc. の破綻 (リーマン・ショック) による世界的な信用収縮のあおりを受けて、外国での資金調達に依存していたロシアの大企業は資金調達難に直面し、ロシアからの資本流出も相まって、ロシアの株式市場は大きく揺らいだ。 2008年10月15日には既に指数が5月の最高値の時の3分の1近くにまで急落するなど、ロシアの株式市場はこの3年の間に獲得した資金を一挙に失ってしまった。 また、ロシア経済を支えるウラル産の原油価格は2008年7月3日に1バレル139.5ドルの史上最高値を記録したが、その後は急落し、11月中旬には40ドル台、12月には30ドル台に落ち込んだ (ウラル原油はWTIよりも数ドル割安な価格で取引されている)。 ロシアの2008年度の国家予算は、原油価格が1バレル70ドル (年平均) で推移するとの前提で組み立てられており、こうなると、国家予算は赤字に転落することになる。 原油価格の暴落に加えて、ここ5年間右肩上がりだったルーブルも急落している。 経済危機によりルーブルは対ドルで2008年8月7日の23.5ルーブルから2009年1月30日には35ルーブルにまで下落している。 ロシア政府は日々外貨準備を取り崩して、ドル売りルーブル買いを行っているが効果はなく、外貨準備が急速に減少してきており、深刻な状況になりつつある。 ロシアの外貨準備は、2008年8月までは原油価格の上昇に伴って順調な伸びを示していたが、9月から減少に転じた。
2008年1月から10月のロシア外貨準備高 (単位:10億ドル) 上記外貨準備高の新・旧は、ロシア中央銀行広報部の発表による外貨準備算出法が、10月に世界標準の計算法にあわせて変更になったことによる。 この外貨準備は、10月3日には5461億ドル、10日には5306億ドル、17日には5157億ドル、24日には4847億ドル、31日には4846億ドル、11月7日には4754億ドルと減少を続け、2009年1月1日には4270.8億ドルと、1年前 (2008年1月1日) から比べると10%減少した。
事態の推移
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2008年5月19日 |
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RTS指数が2498.10ポイントの最高値 (終値ベースで2487.92) を記録する。
Индекс РТС закрылся на рекордной отметке - 2498,10 пункта |
2008年7月3日 |
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ウラル産原油価格が1バレル139.5ドルの史上最高値を記録する。
より良質なWTI原油価格は6月14日に1バレル147.56ドルを記録している。
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2008年7月25日 |
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V.プーチン首相が 「メチェル」 社 Открытое акционерное общество "Мечел" を非難する。
ニージニー・ノヴゴロドでの会議で、V.プーチン首相は、大手採鉱・冶金会社 「メチェル」 に対して、同社が石炭を国内市場で外国で売るよりも2倍も高く売り、そのことで国家は税金の徴収不足になり、国内の鉄鋼価格が急騰したと非難した。 その後、プーチンはロシア検察庁審理委員会にこの事実を審理するよう要求した。 |
2008年8月8日 |
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外貨準備が5,975億ドル (2007年の名目GDPの37.6%) を記録する。
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2008年8月8日 |
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ロシア軍とグルジア軍が武力衝突する。
2008年8月7日、グルジア軍が南オセチア 「自治州」 に侵攻したことで、翌8日、ロシア軍が自国民の保護を主張して南オセチアに軍隊を派遣、ロシア軍とグルジア軍の戦闘が始まった。 |
2008年8月29日 |
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外貨準備が5,825億ドルとなる。
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2008年9月1日 |
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予備基金の総額は3兆5046億2000万ルーブル (1426億ドル)、国民福祉基金の総額は7845億1000万ルーブル (319億2000万ドル)
ロシアには、石油・天然ガス部門からの税収の一定部分について、財政収入に繰り入れずに蓄積する2つの基金、すなわち石油ガス収入の補填を目的とした 「予備基金」 と、年金基金の赤字補填を目的とした 「国民福祉基金」 が存在する。
両基金は2008年2月に旧来の 「安定化基金」 を再編して設立され、そのうち予備基金は名目GDP比10%を目安に蓄積されることとなっており、2月1日時点での残高は1373億ドルであった。
国民福祉基金の同時点での残高は845億ドルで、両基金の合計額は2218億ドルであった。
両基金の外貨建て資産はロシアの外貨準備に含まれている。
ロシアの外貨準備高は2月13日時点で3886億ドルであったことから、外貨準備の半分以上が両基金で占められていることになる。
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2008年9月5日 |
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外貨準備が5,736億ドルとなる。 8月29日から1週間で89億ドル (1.6%) 減少。
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2008年9月12日 |
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外貨準備が5,603億ドルとなる。 9月5日から1週間で133億ドル (2.4%) 減少。
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2008年9月15日 |
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リーマン・ショック
世界金融危機の発端
金融危機を深刻にしたのはサブプライムローンの証券化であり、CDOへの再証券化によって最終的なリスクの存在を不透明にしたことにある。
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2008年9月16日 |
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ロシアの株式市場は、1日の下げ幅としては1998年の通貨危機以来という下げ幅を記録する。 RTS指数終値は前日比11.47%安の1131.12ポイント、MICEX指数大引けは前日比17.45%安の881.17ポイント (一時は前日比約20%下落)。 (16/09/2008 19:04) Рынок акций: индекс РТС к закрытию торгов рухнул на 11.47% до 1131.12 пункта, индекс ММВБ − на 17.45% до 881.17 пункта.
ロシア連邦金融市場局は17日、18日とRTS市場およびMICEX市場を一時閉鎖して沈静化を図ると同時に、金融当局が大量の資金を市場に投入したが、5月の高値に比べると60%近くも下がった。
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2008年9月19日 |
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外貨準備が5,594億ドルとなる。
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2008年9月22日 |
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V.プーチン首相が、世界金融市場およびロシアの商品取引所に関する危機に関して、「ロシアの商品取引市場も緊迫したものになっているが、これは我々の問題から発生したものではない。 ロシアの経済システムに問題はない。」 と表明する。
V.プーチン首相はソチで開催された第7回ソチ国際投資フォーラム 「ソチ2008」 (2008年9月18日〜21日) に来訪した外国企業代表団との会談で、
現在のロシア経済状況に関して、「ロシアは購買能力ですでに世界第7位の経済規模を持ち、過去10年間にわたって、年率10%で成長してきた。
去年の実質成長率は8.1%であり、今年上半期は8%であった。」 と説明。
さらに、2009年末、「最悪でも2010年初めには、2003年に立案したGDP倍増計画が実現するであろう」 との見方を示し、「投資と国民実質所得の伸びは年率10%またはそれ以上の伸びを示していくだろう」 、
「経済政策にとって、長期的な安定性がいかに重要であるか理解している。このため、いくつかの深刻な、あるいは危機的な政治的状況にも関わらず、ロシアの経済発展モデルに変更はないことを強調したい。
我々の政策に変更はなく、市場が閉鎖的になることもなく、また、経済に関して政治的動機からの決断や行動はなされない。
我々の計画はすべて経済を最大限開放し、明瞭にすることを目指している。」 と述べた。
また、今後政府が税制緩和措置をとっていくことを強調し、「今日、世界経済が直面している問題は明白で、どのようなプロセスを辿っているかは明らかである。
このような状況で我々は当然のことながら、付加価値税に関する議論を当面休止する。
我々は社会的義務を果たすため、極めて慎重かつ客観的に行動しなければならない。」 と述べた。
これに関して、統一社会税引き下げの可能性が検討されていることを表明した。
そのほか、鉱物資源採掘税および石油・ガス部門に対する複数の関税引き下げの決定に関して、「我々はガス・石油部門に対するさらなる税制緩和の可能性を検討しており、2010年に追加措置がとられるであろう。
また、有価証券市場参加者に対する税制緩和もなされるであろう。
外国人投資家に対するロシアの立場は変わらない。」 と述べた。
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2008年9月26日 |
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外貨準備が5,628億ドルとなる。
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2008年10月1日 |
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経済発展省 Минэкономразвития で作成された 「2020年に向けてのロシア連邦の長期社会経済発展構想」 が閣議で承認される。
"Концепция долгосрочного социально-экономического развития Российской Федерации на период до 2020 г."
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2008年10月3日 |
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外貨準備が5,461億ドルとなる。
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2008年10月8日 |
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株式市場が取引開始直後から暴落し、約30分後に取引が停止される。
前々日6日に2割の急落を見せ、一時閉鎖されたばかりであった。
エネルギーや金融関連の主要株式が軒並み売られ、主要市場のMICEXは前日比14%の下落で2日間の閉鎖、RTSも11%下げて金融当局の許可が出るまで取引停止とされた。
RTSの指標は5月の最高値から7割の下落である。
5月の最高値の時と比較すると指数が3分の1近くに下落し、ロシアの証券市場はこの3年間で獲得した資金を一挙に失った。
ロシア政府は2,100億ドル (約21兆円) 規模の緊急経済対策を打ち出したものの、"ロシア売り" に歯止めがかからなかった。
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2008年10月10日 |
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外貨準備が5,306億ドルとなる。
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2008年10月15日 |
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RTS指数が800ポイントを割り込み、798.85ポイントまで下落する。
Индекс РТС опустился ниже психологически важной отметки 800 пунктов |
2008年10月16 日 |
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15 日、16 日と2日連続して株式市場が下落し (両日とも株式市場の急落のため取引を断続的に一時停止)、RTS指数の2日間合計した下落率は17.9%となる。
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2008年10月17日 |
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外貨準備が5,157億ドルとなる。
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2008年10月24日 |
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外貨準備が4,847億ドルとなる。
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2008年10月27日 |
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「ロシア連邦中央銀行法」 および 「有価証券市場法」 第12条が改正される。
Федеральный закон Российской Федерации от 27 октября 2008 г. 176-ФЗ
ロシア連邦法の改正は、ロシア中央銀行の権利の拡大を目指したもので、特に有価証券取引に関する項目を強化している。 これによって、ロシアおよび外国の貸付機関やロシア政府との間で、国債だけでなく様々な有価証券を売買できる権利が中央銀行に付与された。
さらに、中央銀行の融資担保としての有価証券を売却することも可能になった。
(同案は10月23日に下院で採択され、同27日に上院で承認された。)
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2008年10月31日 |
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外貨準備が4,846億ドルとなる。 (外貨準備算出法変更)
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2008年11月6日 |
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プーチン首相が、IMF (国際通貨基金) が発行する有価証券に予備基金を投資できるよう署名する。
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2008年11月7日 |
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V.プーチン首相が、「金融部門および個々の経済部門における情勢の健全化行動計画」 を承認する。
"План действий, направленных на оздоровление ситуации в финансовом секторе и отдельных отраслях экономики"
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2008年11月7日 |
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外貨準備が4,754億ドルとなる。
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2008年11月11日 |
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通貨バスケットの誘導目標が30.41から30.70へ1%引き下げられる。
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2008年11月14日 |
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外貨準備が4,535億ドルとなる。
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2008年11月21日 |
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外貨準備が4,499億ドルとなる。
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2008年11月24日 |
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「2009〜2011年の予算案」 が承認される。 "Проект федерального бюджета на 2009 год и на плановый период 2010-2011 годов" 予算案は、10月31日に国家会議 Госдума (下院) で採択され、11月12日に連邦会議 Совет Федерации (上院) で承認された。
Федеральный закон Российской Федерации от 24 ноября 2008 г. N 204-ФЗ "О федеральном бюджете на 2009 год и на плановый период 2010 и 2011 годов" 歳出総額は9兆246億5499万8300ルーブル、歳入総額は10兆9271億3773万3000ルーブルで、 1兆9024億8273万4700ルーブルの経常収支黒字が見込まれるとされた。
政府原案が提出されてから予算が成立するまでの間に、原油価格の急落と金融危機対応のための政策パッケージの作成という不測の事態が生じた。
2009年予算は、原油価格が1バレル95ドル(年平均)で推移するとの前提で作成され、成立した。
政府原案に示された実質GDP成長率予測は、2009年が6.7%、2010年が6.2%、2011年が6.2%であったが、原案作成後に原油価格が大幅に下落したため、クドリン副首相兼財務相は11月中旬に、原油価格の修正見通しを明らかにした。
原油価格の見通しは、2009年が1バレル95ドルから50ドルへ、2010年が90ドルから55ドルへ、2011年が88ドルから60ドルへ大幅に下方修正された。 同氏は、2009年の原油価格が70ドルで推移した場合、財政収支はほぼ均衡し、かつ経常収支黒字を確保できるとの見通しを示した。
加えて、原油価格が11月中旬の水準である50ドルで推移した場合、2009年の財政収支が赤字に転落するのみならず、貿易収支も大幅な赤字を計上するとの見通しを明らかにした。
仮に財政赤字に転落した場合は、予備基金を取り崩し、議会で承認された歳出計画を予定通り実施することになると述べた。 財務省は、クドリン副首相兼財務相が示した現実的な原油価格見通しに基づく2009年以降の経済成長率予測を、12月にも公表する予定である。
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2008年11月28日 |
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外貨準備が4,549億ドルとなる。
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2008年12月5日 |
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外貨準備が4,370億ドルとなる。
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2008年12月12日 |
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外貨準備が4,354億ドルとなる。
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2008年12月19日 |
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外貨準備が4,508億ドルとなる。
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2008年12月24日 |
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メドヴェーヂェフ大統領がテレビの生放送に出演し、2008年の総括を行う。
金融危機の原因として、アメリカ経済およびグローバリゼーションを槍玉にあげた。
また、インフレの抑制や経済の多様化という点では、政府の対策が及ばなかったことを認めたが、ロシア経済にとって、金融危機の影響は、それほど深刻なものにはならないとの見解を示した。
メドヴェーヂェフ大統領は、可能な限り、国民を安心させることに努め、暗い見通しは示さなかった。
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2008年12月27日 |
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アレクセイ・クドリン財務大臣が、2009年にはロシア連邦の国家予算は1.5〜2兆ルーブルの不足を予想しており、予備基金から支弁されるとの声明を出す。
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2009年1月2日 |
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外貨準備が4,260億ドルとなる。
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2009年1月9日 |
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外貨準備が4,265億ドルとなる。
外貨準備高の内訳は、外貨資産4,062億500万ドル、特別引出権 (SDR) 100万ドル、国際通貨基金出資金10億5,100万ドル、金145億3,300万ドル、その他52億8,900万ドルとなっている。
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2009年1月16日 |
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外貨準備が3,962億ドルとなる。
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2009年1月19日 |
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プーチン首相が財務大臣に対して、すでに承認されている2009年度の予算案を経済大臣の呈示した新しいマクロ経済指数 (年平均石油価格1バーレル41ドル、0.3%のGDPの減少、インフレ率13%、1ドル=35ルーブル) に基づいて見直すよう要請する。
それらに基づいた2009年度の予算の不足はGDPの5%になった。
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2009年1月20日 |
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財務省が、2009年1月1日現在の予備基金の残高は4兆276億4000万ルーブル、国民福祉基金の残高は2兆5844億9000万ルーブルであることを発表する。
2008年1月1日現在の安定化基金 (2008年1月に予備基金と国民福祉基金に改組) の残高は、3兆8491億1000万ルーブル (1568億ドル) であった。
2008年10月〜12月の間に、石油・ガス収入から1兆1506億4000万ルーブルが国民福祉基金に繰り入れられ、財務省からの指示によって国民福祉基金から4000億ルーブルが対外経済銀行に振り向けられた。
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2009年1月23日 |
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外貨準備が3,865億ドルとなる。
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2009年1月23 日 |
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ロシア中央銀行が、ドルとユーロで構成される1通貨バスケットの下限を41ルーブルとすることを表明する。
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2009年1月23 日 |
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RTS指数が498.2ポイントを記録する。 |
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2009年1月28日 |
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IMF (国際通貨基金) が、2008年11月に3.5%としていたロシアの経済成長率の予測値を、「世界経済見通し」 の最新版で4.2ポイント引き下げて−0.7%に下方修正する。
また、2010年予測は前回の4.5%から1.3%に修正する。
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2009年1月30日 |
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外貨準備が3,881億ドルとなる。
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2009年2月1日 |
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外貨準備が3,868億9,400万ドルとなる。
外貨準備高の内訳は、外貨資産3,465億8,600万ドル、特別引出権 (SDR) 100万ドル、国際通貨基金出資金10億1,8000万ドル、金432億1,546万6,000ドル、その他238億2,300万ドルとなっている。
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2009年2月6日 |
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外貨準備が3,835億ドルとなる。
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2009年2月13日 |
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外貨準備が3,866億ドルとなる。
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2009年2月18日 |
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経済発展省が、2009年の経済成長率予測を−2.2%へ下方修正する (前回発表では−0.2%)。
このほか、鉱工業生産は−7.4% (前回は−5.7%)、固定資本への投資は−14% (前回は−1.7)に下方修正し、石油価格予想は1バレル41ドルに据え置いた。
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2009年2月20日 |
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外貨準備が3,819億ドルとなる。
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2009年3月1日 |
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財務省が、2009年3月1日時点における予備基金総額は4兆8697億4000万ルーブル (1363億3000万ドル)、国民福祉基金総額は2兆9955億1000万ルーブル(838億6000万ドル)と発表する。
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2009年3月5日 |
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財務省が、予備基金と国民福祉基金による外国機関債投資を禁止する。
予備基金の資産の95%はソブリン債 (各国の政府や政府関係機関が発行し、または保証している国債などの安全性の高い債券) に投資することが規定されており、残りの5%が国際的な金融機関へ投資可能となっている。
今回の財務省の処置では、アメリカ政府関連住宅金融機関 (GSE) の連邦住宅抵当金庫と連邦住宅貸付抵当公社を含む外国の政府機関が発行する債券への投資が禁止された。
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2009年3月10日 |
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A.クドリン財務大臣が、一時的に3年間の予算放棄すること、および2009年度予算の支出項目を最適化することを具申する。
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2009年3月12日 |
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プーチン首相が、ノヴォクズネツクで行われた鉱山業者との会談で、2009年の財政赤字を補うため、予備基金および国民福祉基金から3兆ルーブルを拠出することになると表明する。
プーチン首相は、すでに2009年上半期に財政赤字に陥らないよう予備基金から1兆6039億7730万ルーブルまでを拠出する命令書に署名している。
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2009年3月19日 |
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2009年予算の大幅な改定案と 「2009年のロシア連邦政府による危機対策プログラム」 が閣議決定される。 "Программа антикризисных мер Правительства Российской Федерации на 2009 год"
Программа антикризисных мер правительства РФ |
2009年3月20日 |
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外貨準備が3,853億ドルとなる。
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2009年3月27日 |
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連邦議会が2009年度予算に関する新法案の国会提起の法的根拠を政府に委任する予算法規を承認し、予算不足の資金供給のため、予備基金の使用制限を解除する。
以前の所見では、同基金は残存の石油ガス収入の補充にのみ使用することができた。
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2009年3月27日 |
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外貨準備が3,880億ドルとなる。
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2009年3月29日 |
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イギリスのBBCが、メドヴェーヂェフ大統領が新たな基軸通貨を創設する案に対して重ねて支持を表明したことのインタビューを放映する。
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2009年3月31日 |
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ロシア政府が2009年度連邦予算修正案を 国家会議 Госдума (下院) に提出する。
歳出は9兆7,000億ルーブル、歳入は6兆7,000億ルーブルで、国家予算はこの8年間で初めて財政赤字に転落し、その額は3兆ルーブル (GDPの7.4%) になる。
これは予備基金によって埋め合わされる。
予算の修正は、GDPの低下が2.2%、インフレ率13〜14%、年平均原油価格1バレル41ドルという値に基づいて計算された。
経済危機防止対策の実現と国のあらゆる社会的義務の遂行のために1兆6000億ルーブル以上が追加で確保されており、歳入の減少にも関わらず歳出は6670億ルーブルの増 (7.4%) となった。
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2009年4月2日 |
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ロシア国家統計局が2008年GDP統計を発表する。
ロシアの2008年の経済成長率は5.6%、GDPは名目値で41兆6,680億ルーブ
(2007年は経済成長率8.1%、GDPは名目値で33兆1,140億ルーブル)であった。
経済発展省の予測によると、2009年はGDPの低下が2.2%に達する見込み。
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2009年4月2日 |
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ロンドンで開催されている20カ国・地域首脳会合 (G20金融サミット) で、基軸通貨ドルに代わる国際準備通貨の創設をロシア政府が正式に提案する。
第二次大戦末期の1944年7月に連合国が主導した連合国通貨金融会議 (ブレトンウッズ会議) で 「金・ドル本位制」 が確立され、ドルが世界の基軸通貨となった。
金・ドル交換停止による変動相場制に移行した1971年8月の 「ニクソン・ショック」 以後も、アメリカ合衆国は圧倒的な経済と政治力を背景にドルの覇権を維持しており、IMFによると、2007年時点でドルは世界の外貨準備の64.7%を占め、以下ユーロが25.8%、英ポンド4.4%、日本円3.2%と続いている。
世界同時不況でアメリカ合衆国政府が大型景気対策を実施し、財政赤字が1.7兆ドルと過去最大に膨らみ、その一方で、アメリカに端を発する金融危機の影響を受けた欧州金融危機の深刻化でユーロの信認がゆらぎ、安定資産としてアメリカ国債に資金が流れ込んでおり、暴落のリスクを抱えたドルに依存している新興国や途上国は 「膨張し続けるドルはインフレの危険をはらんでいる」 と、危機感を募らせている。
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2009年4月6日 |
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国家会議 (下院) で、「2009年のロシア連邦政府による危機対策プログラム」(金融危機対策計画) が審議される。
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2009年4月28日 |
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2009年修正予算が承認される。 修正予算は、4月15日に国家会議 Госдума (下院) で採択され、4月22日に連邦会議 Совет Федерации (上院) で承認された。
Федеральный закон Российской Федерации от 28 апреля 2009 г. N 76-ФЗ "О внесении изменений в Федеральный закон "О федеральном бюджете на 2009 год и на плановый период 2010 и 2011 годов""
2009年の金融危機対策予算によると、歳出総額は、当初予定の9兆246億5499万8300ルーブルから、9兆6922億1936万5600ルーブルに増加した一方、歳入総額は、10兆9271億3773万3000ルーブルから6兆7138億2103万3000ルーブルに減少することになり、2兆9783億9833万2600ルーブルにも及ぶ財政赤字が10年ぶりに生じることになった。
この赤字額については、予備基金 Резервный фонд (原油価格下落への備え) から補填することが決定していた。
すでに、プーチン首相は、赤字補填のために、予備基金から1兆6000億ルーブル以上を拠出することを指示している。
プーチン首相は、ロシアには十分な準備資金があり、国民に対する社会的義務を果たし、継続して金融危機対策を行っていくためには、準備基金からの資金拠出が必要だとの認識を示している。
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2009年6月6日 |
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サンクトペテルブルクで開かれている経済フォーラムで、A.クドリン副首相兼財務相が、中国人民元が対外支払用の新たな準備通貨になるとの見通しを示す。
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2009年6月10日 |
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ロシア中央銀行が、外貨準備高に占める米国債の比率を引き下げ、国際通貨基金 (IMF) 発行の債券を購入する方針を示す。
ロシアの外貨準備4042億ドルに占める米国債の割合は約30%で、米国債保有国では世界第5位。
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2009年6月19日 |
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V.プーチン首相が政府の危機対策計画に署名する。
Путин подписал программу антикризисных мер правительства |