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時事新報 1918 (大正7).8.3

ロシア主権は侵害せず、と政府が出兵宣言

 


 

出兵宣言  政府は二日午後六時、官報号外を以って左の宣言を発表したり。

帝国政府は露国人民に対する旧来の隣誼を重んじ、露国の速やかに秩序を恢復して健全なる発達を遂げんことを、衷心切望して止まざる所なり。 しかるに近時露国の政情著しく混乱に陥り、また外迫を捍禦するの力なきに乗じ、中欧諸国はこれに圧迫を加うることいよいよはなはだしく、その威圧遠く極東露領に浸漸して、現にチェック・スローヴァック軍の東進を阻碍し、その軍隊中には多数の独澳俘虜混入し、実際に於いてその指揮権を掌握するの事跡顕然たるものあり。

そもそもチェック・スローヴァック軍はつとに建国の宿志を抱き、始終連合列強と共同対敵するものなる故に、その安危の繋る所延いて与国に影響すること尠なしとせず、これ連合列強及び合衆国政府が同軍に対し多大の同情を寄与する所以なり。 今や連合列強は、同軍が西比利亜方面に於いて独澳俘虜のため著しく迫害を被るの報に接し、空しく拱手傍観する事あたわず、既にすでにその兵員を浦塩に派遣したり。 合衆国政府もまた同じくその危急を認め、帝国政府に提議して、まず速やかに救援の軍隊を派遣せんことを以ってせり。 ここに於いて帝国政府は、合衆国政府の提議に応じてその友好に酬い、かつ今次の派兵に於いて連合列強に対し歩武を斉しうして履信の実を挙ぐるために、速やかに軍旅を整備し、まずこれを浦塩に発遣せんとす。

叙上の措置を取るに方り帝国政府は、一意露国及び露国人民と恒久の友好関係を更新せんこと企図するを以って、常に同国の領土保全を尊重し、併せてその国内政策に干渉せざるの既定主義を声明するとともに、所期の目的を達成するに於いては、政治的または軍事的にその主権を侵害することなく、速やかに撤兵すべきことをここに宣言す。

大正七年八月二日
各大臣署名

 


 

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